断熱の大切さを考える。

私は、フランスで数週間暮らしました。フランスは日本と家の考え方に大きな違いがあるのに気が付いたのです。日本の木造建築では夏は通気性によって暑さを凌ぎ、冬は暖をとり寒さを凌ぐという生活スタイルが自然と思っていました。断熱の優先順位は決して高くなかったのです。フランスの緯度は日本より上であり、冬の外気温度は日本より低いのです。それでも住宅内の温度差は少なく服を着込む必要も無かったのです。おかげで快活に動け気持ちも弾みました。室内温度を快適に保つと、生活クオリティがここまで向上するかと身をもって実感しました。「断熱の大切さ」を家づくりのプロフェッショナルとして皆様にお伝えしたいと思いました。

Q1.断熱性能により健康リスクが変わりますか?

日本の夏は高温多湿で冬は低温低湿です。過ごしやすさは温度ではなく湿度による影響が高いのです。多湿の夏はより暑さを増します。低湿の冬はより寒さを感じます。我が家が暖かいのは家族の絆です。室内は寒く忍耐強く暮らしてきました。

最近では省エネだけではなく健康面から断熱性について注目をされています。

室内の急激な温度変化が血圧の乱高下や脈拍の変動を起こし、これがヒートショックリスクとなります。リビングと脱衣所、トイレ、浴室と脱衣所など温度変化の激しいところを移動することによりヒートショックがおこり脳卒中や心筋梗塞などの深刻な疾患にいたる場合があります。
グラフは、浴室内死亡事故と気温の関係を示した図です。15度以下は急死者数が多いのがわかります。冬場の10月から翌年4月の七ヶ月間はヒートショックの可能性も極めて高い期間です。実際ヒートショックによって救急搬送される人は、この棒グラフよりはるかに多いのです。

ヒートショックのグラフ

ヒートショック死と交通事故死の比較グラフ

定死亡者数が4倍近いという統計もありヒートショックの危険性と断熱対策の重要性がわかります。

ヒートショックの危険性

出展:東京健康長寿医療センター研究所『高齢者の入浴中の急死に関する調査』2011年総務省総計 『平成23年中の交通事故死亡者数について』

交通事故より危険
暖かい家は活動量もUP

特に京都は冬場救急搬送される方が多く、全国ワースト上位10%以内に入ります。(東京都健康長寿医療センター調べ)
寒い家では活動量が低下し運動不足になります。運動不足は健康寿命に影響します。
私達はこの健康寿命と平均寿命の差を縮小する温度差の少ない住空間で活き活きと過ごせる家づくりを提案いたします。

欧米と日本の家の違い

Q2.欧米と日本は住宅断熱に違いがあるのですか?

欧米と比べると、断熱について基本的な考え方や、基準があまりにも違いすぎるのがわかります。その一つが熱還流率(Uw)と言う熱の逃げる状態を表す値です。少ない値が良い(熱が逃げない)のです。国内外の代表的な窓の開口部は重要な断熱基準であり、下の表はその比較です。

日本の断熱基準は世界の基準と比較すると随分低いのが分かります。

地域 ドイツ アメリカ(New York) 日本(北海道) 日本(京都)
熱貫流率Uw
「W/㎡/k」
1.30 1.65 2.33 4.65 
義務化の有無 義務化 遵守義務なし
基準名基準名 EnEV IECC 建築物省エネ法

出典 日本建築学会技術報告書 第21巻 第49号

日本の住環境では現実的には難しいとも思われますが近づけることはできます。
次のグラフをご覧ください。実際にリフォーム断熱をした結果のデータで示したのが次のグラフです。

断熱性能を示したグラフ

外気温3℃の朝7時に薪ストーブを点火しました。この時の室内温度10℃でした。朝から夜にかけて室内温度は20℃以上をキープしています(まきは少量燃焼状態)。そして、夜19時に、ストーブは消されています。その翌日の朝を見てみましょう。外気温は3℃の寒い朝です。暖房は消したにもかかわらず室温は15-19℃を維持しています。快適な朝の実現です。その後は朝8時に薪ストーブは小量の薪で点火されました。前日と同じように朝から夜まで20℃以上を維持し、健康や活動量にも素晴らしい結果が出ています。